ソジャット・ヘナ刈り紀行⑤文化の根付く町と誇り高い人々

さて、滞在2日目のサンセットチャイタイムも終えてのんびりしていると、チャニラージが「今夜街にいかないか?」と声をかけてくれました。

「そこらじゅうがディワリのライトアップをされていて綺麗だよ。バイクで案内するよ。」と言うのです。まだ畑と工場、市場の往復を車でしかしていないので、この街の空気をもっとダイレクトに感じられるのはワクワクします。

でもその前に腹ごしらえ。今夜はカディです。

カディはインドの各地で食べられるヨーグルトベースのスパイススープです。ラジャスターンカディはホールスパイスや豆類を多用した濃厚な風味が特徴の伝統的なものなのだそうです。ひよこ豆をふんだんに使ったトロミやホールスパイスの香り高さが際立ちます。お隣グジャラート州では少し甘みがあったり、一般的にはパコラというひよこ豆の衣をまとった天ぷらのようなものが入ってたりしますが、ご飯やチャパティなどと一緒にいただきます。酸味もあって爽やかな中にスパイスが香ってとても食べやすくスルスルといけちゃいます。

食後のグゥバ。香りが素晴らしくて、ずいぶん長く指に移った香りまで楽しんでしまいました。

腹ごしらえも終えて、チャニラージについてGo!

マハさんの運転するバイクに二人乗りで、わたしはカメラを構えます。インド在住時にはわたしもバイクに乗っていました。乾燥した夜風を切って走る感覚が色々な記憶を呼び起こします。

街に向かう幹線道路のライトはナショナルフラッグカラー。🇮🇳

都会ではすっかり見かけなくなった道路に座り込む牛たち!!ここでは御一行が健在でした。

どなたかの立像もライトアップ。

さて、いよいよマーケットのライティングロードに入ります!

クリスマスイルミネーションみたいに、みんな連れ立って観にいくのですね。

記念撮影する親子も。

おや、ここからいよいよ商店街ですね。

両脇に並んだお店には、みんな夕涼みよろしくディワリを寿いでいる感じが素敵です。

目があって「ハッピーディワリ!!」と声をかけると、「ハッピーディワリ!」と合掌してくれます。

どこのお店もみんな幸せそう。

おおお!the ラジャスターン!女性のラジャスターン伝統衣装といえばブラウスとスカートタイプのレンガーですが、男性はといえばやはりカラフルなターバンでしょう。

ラジャスターンではターバンは生活様式にねざした実用性と地域文化に由来する社会的な象徴として深く浸透しています。 

乾燥した砂漠地帯で日差しや乾燥、砂埃から頭や顔を守ったり、時に朝晩の寒さにも対応します。長いものは18mもあるものもあるそうで、野外で活動することが多い羊飼いなどは長い布に空気を含ませて大きく巻いています。

ターバンは頭も守るだけでなく時に道具としても活躍します。井戸から水を汲み上げるだとか時には毛布のように被って眠ることもあるのだとか。

またターバンには社会的な役割もあります。カースト時代の名残で職業ごとに色も異なり、例えば羊飼いは赤、複数の色を使ったターバンは階級の高い人々が着用し、王族のターバンはさらに複雑な色と装飾が加えられるといった具合です。また巻き方もさまざまで街ごとに違った巻き方があったりもするそうです。ターバン一つでどこの部落の何屋さんと一目でわかってしまったりするわけです。

写真の右のおじさまはなかなか立派なターバンですね。真ん中の方は形を作られている帽子タイプのターバンかしら?

またラジャスターンは染織も有名で、ここソジャットから程近いパリという村もさまざまな染めをやっているそうで、いつか機会があれば行ってみたいです。

小さな商店街でシンプルな装飾ですが、カラフルで幻想的です。これでも数キロほどはライトが続いていました。

以前住んでいた街は経済都市の郊外だったので、こういった大きなお祭りではそれはそれは盛大な贅を尽くした煌びやかな祝祭を見ることができました。

それはそれで美しくうっとりする素晴らしさなのですが、この小さな田舎町のネオン看板も見当たらないような無駄のない生活の中で、素朴に敬虔にこの地に根差し感謝をもって迎えるディワリは、皆が笑顔で幸せそうで、目が合えば微笑み、この上なく温かみがありました。

良い夜でした。

以前、加藤登紀子さんのお話をうかがったことがあります。その時お話しされた一つに「〜〜料理」というものがあるところ、例えばトルコ料理とかインド料理とかのようにですが、そういうものがある国はちゃんと文化があるのだと話されてとても腑に落ちた記憶があります。

自分たちの食べるもの、または暮らしそのものを豊かに味わい、語り継ぎ一つの体系にまで育ててきたということ。そしてそこに誇りを持っていること。それが人々の生きた証となり、歴史となり文化となる。

そういう意味でもここラジャスターンにはどこにもない唯一無二の文化がたくさんあります。インドは隅から隅までそういう国だといえますが、本当にユニークで他に類を見ない文化があることは今ある自分たちの「持っているもの」に向き合い続けたということだと思います。

なんかね、こんな過酷な自然環境の中に住む彼らを見ていると過不足なく生きているって感じがするんです。都会に比べればけして物質的に豊かなわけではありませんが、心が満たされているというか、ちょうどいいというか。何かが欠けているという感じがせずに、ニュートラルで心地が良いのです。

今回ヘナブラザーズの三兄弟とたくさん話す機会がありましたが、何度となく「レガシー」という言葉を聞きました。伝統とか遺産といったような意味でしょうか、いずれにしても継承していくものという意味で使われていました。彼らの中にそういった引き継いでいくという意思が染み込んでいるのですね。彼らは先祖を敬い、文化を守るとても誇り高い民俗なのだなと改めて思うのでした。

そしてまたこの日も自分を振り返る日となるのでありました。