ソジャット・ヘナ刈り紀行④マルワリ・家族や人や大地との絆

さて、ソジャット到着から長い1日が明けて、下の階のキッチンから「トントントン」と味噌汁作りの音さながらチャイを入れるためのスパイスを潰すこぎみよい音が聞こえてきます。

朝は家の前に牛たちが巡回します。昨日の残り物のチャパティを牛たちに食べさせます。

毎日の食事でまるで「わんこチャパティ」と言えるほど、やっとの思いで食べ切ったと思うとまだ乗せてくれるチャパティ。出されたものを残すのは忍びないと思ってしまう日本人な私ですが、ここではわざわざ牛にあげるために多めにチャパティを焼くというくらい生活に深く根付いた信仰があるので遠慮なく残したりお断りしていいのだとか。

チャイをいただきながら、キッチンの前にあるお庭の畑を見せてもらいました。

こちらメティー(フェヌグリーク)ですね。私の大好物の苦味のある葉物野菜であり、種はみなさんご存知カレーの香のメインとも言えるスパイスとなります。

乾燥した葉っぱカスリメティーはチキンカレーなどによく仕上げの風味づけとして使われますね。

発芽して間もないですね。私も八ヶ岳で春と秋に育てています。ここで出会えるなんてなんだか嬉しい。

さて、チャイタイムが終わると朝食です。

今朝のメニューは「ポーハー」。炊いた米を平たく潰して乾燥した乾物素材ですが、水に戻して調理します。

スパイスで香り付けした油にカレーリーフ、ピーナッツや玉ねぎなどと一緒に水に戻したポーハーをいれて炒めます。ライムをギュッと絞って食べるのも最高ですが、ここでは豆の粉を使ったスナックをふりかけて食べるように勧められました。

米を炊く必要がなく手軽に作れるし消化にも優しいので朝食や軽食に重宝します。

さて、ディワリに当たった今回の滞在。ヘナの刈り取りは日本の三賀日のようなものが明けた2日後から。それまではまだお正月ムードで挨拶回りに行ったりやってきたりということでした。

ゲストの私たちはお邪魔にならないかと部屋に篭ろうかと思いましたが、長男オームプラカッシュ氏(以下オム・ジ)が工場のスタッフにディワリのギフトを配るから一緒に行こうと誘ってくれました。

マハラニの商品を管理、パッキングしてくれてるスタッフの皆さんです!!工場が稼働している時は制服を着て全て髪を覆っているのですが、こうして普段着で並んでいると新鮮です!!サイトでヘナのモデルさんをしてくれている方もいます。みなさんいつも笑顔で楽しく仕事をしてくれています。いつも本当にありがとうございます。

なぜかオム・ジに私たちから手渡してほしいと贈り物を託されました。

オム・ジが全員に一つずつ用意したのは高級なミキサー!ディワリは家電などを新調するのによい時ですし、ボスがスタッフの家庭を豊かにするギフトを贈るってなんだかとても徳が高いといいますか、スタッフをとても大事にされているのだと尊く思いました。スタッフからのオム・ジへの信頼が厚くみんないい仕事をしてくれるのも納得です。

マハラニでは関わるスタッフや業者さん、宅配業者さんも含めて全て気持ちよくお仕事をしてほしいと思っています。そのよいエネルギーが商品にも乗ってお客様に届くといいなと考えていますので、こういう現場に立ち会え改めてヘナブラザーズへの信頼が厚くなるのでした。

余談ですが、工場には素晴らしくよい仕事をしてくれる(とてもよく吠え怖い)番犬がいるのですが、そんな彼にも「この菓子が好きなんだよ」とディワリのお菓子をあげていました。

ディワリ休みといえども、今はヘナの収穫期。刈り取りの見極めは一刻を争うので毎日畑に足を運びます。

オム・ジが言います。

「ヘナの茎元の葉が枯れてパラパラと落ちる頃から刈り時なんだ」

まさに今なのです!

●ヘナ刈り唄に秘められたよく染まるヘナの刈り時期

しかし、今年は長雨と雨季の明けが遅いこともあって発育状況が例年と違い、先端の新芽の方はまだ青々とし水分を多く含む種がたくさん付いているのです。これは見極めが難しい。

まだヘナの刈り取りは始まったばかりだけど全体の状況を見てみるか?とオム・ジがヘナ市場に行こうと誘ってくれました。

言ってみれば元旦のこの日、休みのはずなのにこの時期休んでなんていられない!次々とヘナが運ばれてきます。

例年は市場には麻袋に詰まったヘナが積み上げられるだけです。それが今年はどこも麻袋から出して乾かしてる状況。ヘナの葉が24時間以内にパリッと乾かないんです。

二人の奥に見えるヘナと手前のヘナ色が違うのが分かりますか?奥のは乾燥がうまくいかず葉が茶色くなっているものです。オム・ジが言うには今年のはこういう茶色がとても多くなるだろうとのこと。今年は荒れるか?現在マハさんインドにて、刈り取られた今年のヘナを鋭意試験中です。

さてこの時期のソジャット、だんだん冬に近づいていくとはいえ日差しは強く半日でも外にいるのはなかなかのものです。

帰ってランチでーす。今日も美味しそう♪

左から時計回り、夕顔のスパイス炒め煮、ガッターというラジャスターン料理、ジャガイモとグリーンピースのスパイス炒め煮。ここにライスもつきます。

ここで紹介したいのはやはりガッターですね。

ガッターはひよこ豆(ベサン)の粉とスパイスを練って茹でる白玉団子のようなものをヨーグルトベースのスパイススープと合わせたものです。食感はもちもちしてるけど思ったより歯応えもあってすいとんの硬いもののような感じでした。スパイシーなヨーグルトスープは酸味が効いてご飯にかけてもとても美味しいです。

彼らは菜食ですので、積極的にタンパク質を補給します。乾燥した豆の粉や乳製品を使った料理のバリエーションはたくさんあります。独自の食文化にも俄然興味が湧きますね。

ランチが終わり部屋で休んでいるとシャームが下の息子ベダントを連れてきました。まだ授乳のみの彼は2時間おきくらいに泣いては眠っての生活。今回の滞在中同じフロアーで寝泊まりしているので、彼の声を聞かない日はありません。シャーム、シェリー、アルニマが変わるがわる彼をあやしているのを見ていましたが誰も彼の泣き声をうとましがったり困ったりすることがなくて、みんな「可愛いばっかり!」という態度で抱っこしているのです。彼らだけでなく、一族全員がそうで「この小さな命を愛するのが当然」という空気に満ち溢れているのです。

こんなに愛されて見守られて育ったら一体どんな子になるのだろう。楽しみです。そして何よりマルワリの男性って本当によく働く。お料理も給仕も普通にやるし、子育ても奥さんを休ませて自分が面倒を見るというのが当然のよう。彼らもまた家族に愛されて育ってきたからなのだろうなーと、我が家を省みるのでした。

そんなことを考えているうちに午後のチャイタイム。御殿の前の建築中のヒンドゥ寺院の向こうに夕陽が沈んでいきます。

本番ヘナ刈り前のウォーミングアップデーはのんびり過ぎていきます。さっきランチを食べたはずなのに、もうお腹が空いてきます。今夜のご飯はなんだろうなー。

まだ始まったばかりのヘナ刈り紀行、まだまだ続きます。