1月に入り八ヶ岳は一気に寒さが厳しくなりました。山々が白く化粧を始め空気が美しく凍てついています。
今年初のブログは随分と始まりが遅くなってしまいました。改めまして本年もマハラニヘナ・アートビーングをどうぞよろしくお願いいたします。
今年はアートビーング八ヶ岳オフィスを本格的に始動して行く年となります。
以前から少しずつ公開させていただいていますが、八ヶ岳オフィスはヘナや美容品に限らず、農や食、ライフスタイルについて発信していけるベースにしたいと考えています。
ですからこのブログからはそういった活動を中心に稚拙ながらも日頃の生活の一部をお届けさせていただきます。読者の皆様にも何かしら共感、共有をしていただけることがあれば嬉しいです。
さて、今回のテーマは味噌作りです。以前から米や大豆の栽培収穫の様子は少しずつアップさせていただいていますが、味噌作りはその二つの集大成とも言えます。
八ヶ岳の南麓は山梨県となりますが、山梨には「甲州味噌」と呼ばれる伝統的なお味噌があります。米麹と麦麹の二つで大豆を醸すのが特徴です。甲州味噌を継ぐ蔵はいくつかありますが、私たちが山梨に拠点を持ってからずっとお世話になっているのが甲府市で明治元年より150年の歴史を持つヤマゴ味噌でお馴染みの五味醤油さんです。
「手前みそのうた」を引っさげて全国に手前味噌作りを広めたり、発酵デザイナー小倉ヒラクさんと6代目仁さんと妹さんの洋子さんの発酵兄妹による発酵ラジオ『COZY TALK』という番組も持たれ、発酵界を牽引されてるのでご存知の方も多いかもしれません。
子供達が小さかったうちは仲間が五味醤油さんと毎年開催していた「手前味噌作り」の会に参加していました。最高50組の参加者で320kgの味噌を仕込んだこともありました。
最近は子供も大きくなり手前味噌作りもすっかり習慣となり小さなグループで作るようになりました。
以前書いた通り大豆や米を育てるところからも始め、なんでも全部自分たちでやってみたくて、初めのうちは鉄の大鍋に湯を薪で沸かして豆を炊いていた頃もあります。豆を大量に潰すのにも試行錯誤して苦労した時期もありました。
そうこうしているうちに、五味醤油さんからある程度の量があるなら茹で大豆を潰して(近場であれば)提供できること、麹も自家製米を種付けできることをご提案いただきました。できるだけ手前味噌作りがどのご家庭でも身近に感じられるようかゆいところに手の届く手厚いサポートをしてくださいます。
田舎暮らしで農的暮らしをしていると、初めは何でもかんでも全部自分でと思ってしまうのですが、次第にそういった暮らしは核家族では補うのには限界があり逆に生活の豊かさを狭めてしまうことにもなります。そして助け合い補い合う、分かち合い喜び合う村的暮らしにつながっていることに気づいていきます。1人でやると苦行になりうることも、みんなでやると楽しいことになります。
自分ができること、助けてもらいたいこと、助けられること、そのことを考えながら暮らして行くことはちょうど良い塩梅の自分たちらしい快適さを見つけて行くことになります。
そういう気づきのプロセスと天の声のサポートを経て、私たちは数家族で大豆と米を育て、五味醤油さんのサポートを受けながら毎年恒例の味噌仕込みをしています。
もしできるところからでも手作りの調味料を使ってみたいと思われたならお役に立てたら幸いです。
もし自分で全てやる場合のプロセスから書いてみます。
①大豆の浸水をします。
基本は一晩から丸一日。だいたい乾大豆の2.2〜2.4倍の重さに水を吸います。たっぷりの水に浸水します。仕込みたい日の前日の作業となります。
②仕込み当日です。大豆をたっぷりの湯でコトコト柔らかく煮るか圧力鍋にかけて短時間ですますかどちらでも可能です。大事なのは指で潰せるくらいの柔らかさにすることと、煮汁は後で使いますのでたっぷりの湯で茹でることです。
私たちは茹でて潰した状態で五味醤油さんから引き継ぎますので、ここからが作業工程です。
③塩切りという作業をします。
ここでも麹は五味醤油さんに自家製ササニシキ米に種付けしてもらった半生麹を使います。
自分たちで麹を醸すところからもできるのですが、ここもプロにお任せしています。
市販の乾燥麹と違い出来立ての麹はまだ米と米がくっついてブロック状です。
出来立ての麹はまだふわふわとしていてとても可愛いです。
麹をポロポロにほぐし、塩を擦り付けるように揉み混ぜ込みます。
私たちは米味噌なので米麹のみですが、麹の比率を多くすると甘みが強めの味噌になります。今回は通常と甘味噌の2種類のレシピで作りました。
④塩切りをした麹に潰した大豆を混ぜます。
麹は下の方に逃げやすいので、何度も天地を返しながらムラの無いようにしっかり混ぜます。
この時、麹の水分量により豆の水分を吸ってしまう場合がありますので、潰した豆がしっかり麹を包み込まないようなら煮汁を足して調節していきます。麹が水を吸った時のイメージをして味噌ペーストの固さの様子を見てください。
硬さはお好みなのですが、しっかりお団子が作れる硬さがいいと思います。ここで水分が不足すると発酵が遅れることがあります。味噌はおおらかな食品であまり失敗をしたと聞いたことがないのですが、健やかな発酵環境を作ってあげるとより美味しく育つと思います。
⑤ムラなく混ざり一つにまとまるようになったら味噌団子を作っていきます。
ハンバーグの種を丸めるように中に空気が残らないよう手と手で叩きつけるように丸めていきます。ここで空気が内包されてしまうと後々カビが発生しやすくなります。
⑥団子を保存容器に隙間なく詰めていきます。
アートビーング代表まはさんも詰めてます。
この時も空気が入らないように注意して隙間ができないように押し付けていきます。
⑦表面が水平にならせたら、分量外の塩をふります。表面は空気に触れやすいのでカビ予防になりますので、特に容器のキワは念入りにふると良いと思います。
⑧塩ふりのあとは密閉して重しをのせます。密閉は笹の葉や和紙や人によって様々なこだわりがありますが、私はここ数年はエンバランスというこだわりのラップを使っています。
重しは市販のものでもいいですし、しっかり密閉したい場合は塩袋や水を入れた袋で隙間なくピッチり覆うと安心です。その際は水漏れしないようにご注意ください。
容器に関しても、市販のプラスチック樽、木桶や常滑焼の甕でもいいですし、ここ数年の我が家はホーローです。
お手入れも簡単ですし、たくさん漬物があるのでスタックして何段にも置いておけるのが便利です。少量なら最近はジップロックで作る人もいますね。継続的に自分が心地よくできる方法でやるのが良いと思います。
この後は冷暗所、なるべく温度変化の少ない場所に置いておきます。通常平野部であれば一夏超えたら食べられらと言いますが、あとはお好みです。ちなみに一緒に仕込んだ甲府の仲間と八ヶ岳の我が家でも発酵のプロセスやかかる時間が全然違います。ビバルディの『春』をずっと聞かせて醸す味噌蔵さんもあるくらいです。家つき菌や気候や標高など様々な環境の違いが大きく関係するので、それでこそ共に生活した各おうちの手前味噌になるのでしょうね。
ここからは余談なのですが、こうした年間の恒例行事を仲間とするときは一大イベントとして楽しくワイワイやることになっています。
今回は各々仕込みをしてきた食材をスモーカーに託してから味噌仕込みを始めました。
ベーコンに味玉
チーズとナッツ
塩サバ
そして1人一品の持ち寄りランチのはずが、みんなサービス精神旺盛で何品も持ってきてくれるので大宴会状態です。
一年を通して畑の作業を共にして、同じ畑の野菜を食べ、共に保存食を仕込む。
同じ釜の飯を食べるでは無いですが、同じ要素で身体も心も作っているかと思うともう大きな家族です。
本来コミュニティというのは、こうして豊かさを共有して喜び合える大切なものなのだと思います。アートビーングでは八ヶ岳に根を下ろし、こういう和を無理なく少しずつ大切に広げていきたいなと考えています。
少しずつではありますが、この豊かさをアートビーングでも提供していけたらと考えておりますので、乞うご期待くださいますようお願いします。
まずは今回の味噌づくりに活躍した、大豆の販売を近日予定しております!お楽しみに。
sameera