正面に小さく富士山、この写真は稲刈りが終わり、稲が横になっています。
これはバインダーという、現在は古典的な農具で、稲を刈り取りながら麻紐で結束していく機械。一反ばかりを半日くらいで刈り取ります。
このバインダーという機械のおかげで、一反(300坪)の稲刈りは一人で半日ばかりの作業になったわけですが、ここから先が人手が必要になります。それがハザカケという作業です。
実はこのはざかけが、稲刈り作業の中でももっとも手間がかかる作業で、共同作業が欠かせない部分になっています。
このハザカケはお米を天日干しするためには欠かせない工程ですが、資本主義効率化の現在において、はざかけはほぼ廃れた農法になりつつあるように思います。天日で干すという工程には必ずこうした非効率的なはざかけ作業が発生してしまいますので、それがお米のコスト高となります。現在では、コンバインによって、刈り取り脱穀を一度に行い、かつ、天日干しではなく、乾燥機にかけて乾燥させる方法が主流で、お米の低コスト化を達成しました。つまり、手間がかかる天日干し米は駆逐され、コンバインなど大規模機械化農業によって提供される低コスト米が市場を席捲したのです。
刈り取ったお米には乾燥工程が必須
お米は刈り取ったままの状態では水分が20~25%含有されているため、そのまま保管すると劣化してしまうため、水分量を15%程度にまで乾燥させることで長期保管が可能になるためです。
天日干しの価値:天日干しは機械乾燥と何が違う?
総勢10人で五反の田んぼを田植えから除草、稲刈りはざかけ脱穀をやっています。
この違いは洗濯物をお日様の下で干すのと、乾燥機で乾かすやり方との違いに近しいものがあります。お米の乾燥機は一般的に高速で乾燥させるため乾燥中に籾が高温に晒され、お米の発芽率が下がります。要するに生命力がなくなってしまう米が出てきます。低温で乾燥させる方法で発芽率を維持していくやり方もありますが、これは洗濯物を室内で扇風機にあてて時間をかけて乾かす方法に近しいでしょう。
ベストは当然ですが天日干し、これ一択ですが、これがとても手間がかかるやり方で、お百姓さんは食い扶持米(自分が食べる米)だけをはざかけして天日干しします。売る米は農協のライスセンターにお願いすると、コンバインで刈り取りから乾燥までワンストップでやってくれるため、消費者の大半はこうした高温乾燥のお米を口にすることになります。
脱穀
天日干しした米は乾燥した後は脱穀という作業が続きます。
脱穀とは読んで字のごとく、穀物(米)を脱することで、籾が取れます。
籾がとれたら、続いて籾擦りをすることで、玄米が取れます。
毎年、蓋を開けてみないと、、、玄米にしてみないとわからないのですが、、
青がやや多めです
青とは緑色の米のことで、緑色の米は未熟米です。一般的に青が多めくらいがちょうどよいとされており、青が20%程度の状態で刈り取ります。この青は未熟米で、中規模以上の農家では色選別装置によって除去して出荷されます。また、カメムシに食べられた後は黒い点になりますが、これも色選別装置で除去されますが、アートビーングは超小規模農家なので、青もはいったまま、多少のカメムシに食べられた後もそのままです。だからといって食味などには影響ありません。
アートビーングのお米として発売
過去10年間、自身と友人たちの食い扶持として稲作をやってきましたが、今年より、アートビーングのお米としてはざかけ天日干し米を提供します。食い扶持米の延長です。自分たちが食べるために作ってきたお米の一部をまずは試験的に皆さんに限定発売します。
品種はササニシキ
ササニシキの特徴はアミロースが多く含有されており、食味はあっさり、甘さ控えめのお米のため、血糖値があがりにくく、糖尿病になりにくいとされています。現代はコシヒカリを筆頭に、ミルキークィーンなども含め、甘味が多い、アミロペクチンが多いお米が好まれますが、一説では、これが糖尿病の一因にもなっているとされています。友人の子供はお米アレルギーでお米が食べれなかったのが、このササニシキにしてからアレルギーがないのでお米が食べることができると喜んでくれています。その一家もお米のお世話をしてくれています。
お米の炊き方:土鍋推奨
長年愛用している土鍋です。白米で3合、玄米で2合までしか焚けませんが、この土鍋で焚くととても味わいのある炊き上がりになります。
上の蓋をあけると落とし蓋が見えますが、二重の蓋になっています。
二つめの蓋をあけると黒っぽい焼き上がりになっている土鍋です。
圧力鍋はすすめません。
以前は圧力鍋を使って焚いていましたが、現在は味の違いから圧力鍋はやめました。圧力鍋のお米は味が悪いのですが、それ以前に圧力鍋で焚くと100度以上の高温になるようで玄米との相性が悪いようです。
白米か玄米の二択
食べ方は二つです。自宅には簡易精米機(1万円程度)があり、玄米か白米を食べています。白米は都度精米、焚く直前に精米して軽く浸水してからすぐに焚きます。玄米の場合は糠部分に含まれる発芽抑制物質は有害なため、一晩浸水させて洗い流してから2時間程度の時間をかけて土鍋で焚きます。
五部づき米などは糠が中途半端に残り、発芽抑制物質が残されているため、あまりおすすめでないようです。賛否両論ありますが、これは皆さんの好みとしてご判断ください。
自分ファースト
自分ファースト、自分が使っているのと同じヘナを提供し、自分が食べたいからお米を作って同じものを提供する……すべては自分中心です。
今後の展望:陸稲
現在、陸稲の調査研究を行っています。
上の写真は、直播種から大きく成長した陸稲です。品種は福岡正信氏のハッピーヒルで、うるち系の陸稲のため、従来の陸稲と違い、とてもうまいお米ですが、一点だけ欠点があります。
黒穂菌が出てくると、一部に上の写真のようにお米に麹の花が発生します。これは黒穂病といわれていますが、実際はこの黒穂菌が出ているお米のほうがおいしく、この黒穂菌が出ている麹の花を集めると麹が発酵するとのことで、要するに黒穂菌がでると商品化しずらくなるため、ハッピーヒルは食い扶持米が主な用途になるようですが、アートビーングでは、この陸稲や、そのほかの陸稲を研究して提供したいと考えています。
陸稲の利点
陸稲は水田耕作ではありません。キャベツやトマトを栽培している横で野菜のように栽培することができます。しかも育苗も必要ありません。直播によって出芽させ、野菜感覚で一般人の方が日曜菜園の感覚で栽培できるものです。自身で種を植え、自身でお世話をし、自身で刈り取り、足踏み脱穀機などで脱穀できるものです。